缶コーヒーを奪ってくれたターゲット
2025/09/05
これは、かつての上司の失敗談です。調査を開始したのは、金曜日の夕方です。ターゲットは、奥さんと別居中の夫でした。職場からターゲットを尾行して、今の住家であるマンションまで突き止めることに成功しました。案外に思われるかもしれませんが、翌日の土曜日などで、朝からずっとマンションに張り込みをしていても、午前中には動きが見られず、夕方頃になってようやく出かける、ということは珍しくないのです。この時のターゲットも例外ではなく、近くにあるスーパーに1人で姿を現しました。調査は無難に終了し、すんなりと隠れられました。翌日も休暇の様子を探るということで、そのままマンションの前に張り込みを続けました。午前中には動きが見られず、夕方頃になってようやく出かける、というパターンです。ターゲットは、明らかに遠出はしない服装で、近所のコンビニに出かけました。そこで買い物をしたのは、食料品とコーヒーをいくつか。コーヒーをいくつか買い、車の前で足を止めると、先ほど買った缶コーヒーを車の上に置いたのです。そして遠目からその様子を眺めている上司に向かってこう言うのです。「朝からご苦労さん!これ、飲んでくれよ!」そう言うと歩き出し、呆気に取られてしまった上司は、マンションに戻ってしまいました。⸻一体全体、何がどうなっているのかはわかりません。これでは調査がバレているとしか思えません。すぐさま依頼者に連絡を取ってことの成り行きを伝えたところ、調査がバレた理由が判明しました。その理由とは、前日の調査で別宅を存在を知った依頼者が、ターゲットに連絡を取っていたのです。さらに依頼者が「あなた、〇〇に住んでいるらしいわね!一体誰と住んでいるの?隠しても無駄なんだからね!」と啖呵を切ってしまったのです。これを聞いたターゲットは、おそらくベランダの窓からこっそり外を眺めていたのでしょう。そして探偵と思しき人物や車を探していたに違いありません。
仲間の多い人はトクをする
2025/09/05
このときのターゲットは、20代の美人女性で、1人で退社したターゲットは、なぜか愛人宅に立ち寄りました。店を出てしばらく行くと、さも当然のように携帯電話を取り出して通話を始めたのですが、電話中に一瞬振り向いたその目に、なにか得体の知れぬ違和感があったのです。それでも気のせいだろうと楽観視し、そのまま尾行を続けました。ただひとつ気がかりだったのは、ターゲットが会話をしながら会社に戻って行ってしまいました。「なにか忘れ物でもしたのだろうか? それとも社内で呼び戻されたのかな?」そう思うと同時に、どうしても解せなかったのです。
逆尾行される恐怖
2025/09/05
尾行が失敗してしまったばかりに、逆に我々がターゲットに尾行されるようなケースも、稀にあります。といえ、尾行されるのもプロである我々は、決してまくられてはならないのです。車で逃げ切れる自信は十分にあるのですが、車をナンバーを記録されてしまった場合が大問題なのです。平成19年の11月半ばまでは、簡単に車両のナンバー照会ができました。陸運局に行くと、300円ほどで誰でも車検証申請できたのです。車検証には、使用者・所有者の住所や氏名が記されていました。つまり、車検証を見れば、車の持ち主の身元を特定することができたのです。現在は、車体番号の記入も必要になったので、事実上申請できません。我々は情報屋を利用していました。
入室時には細心の注意を!
2025/09/05
部屋への入室の確認や撮影をする場面では、調査がバレる可能性が高くなります。こうしたシーンでは、基本的に一人で気が張り詰めてしまうのも当然のことです。調査における重要なシーンというのは、得てしてリスクが高くなるのです。私の経験でもこれと同じ失敗談があります。これも調査エピソードです。愛人宅に戻ったターゲットを撮ろうとしたが、後を追うパートナーが弱気パートナーだったようで、どうやら気づかれてしまい、そこは素人です。後輩も追跡を怪しまれてしまいました。声をかけてくることはできませんでした。それをやり過ごした後を尾行していると、後輩が案外されていることを察知したので、
私をお探しですか?
2025/09/05
調査がバレてしまうのは仕方がないとしても、探偵がターゲットに声までかけられてしまうのは、あまりに情けない話です。この仕事を続けていると、1年に1回くらいの割合で、この情けない失態をやらかしてしまうこともあるのです。それでは、私が新米だった頃にやらかしてしまった恥ずかしい失敗談を紹介しましょう。⸻この時のターゲットは中年のサラリーマンです。徒歩で行をしていたは、曲がり角を曲がったところでターゲットを見失って慌てて探してみると、突然後ろから「ポン!」と肩を叩かれたのです。──まさか?そう思った私の勘は、ズバリ的中しました。肩を叩いてきたのは、ターゲットだったのです。
GPSの行方
2025/09/05
車を追跡するにあたって、今や欠かせない道具となったのがGPSです。これをターゲットの車に取り付けてしまえば、離れながらにして車の現在地をリアルタイムで特定することができます。GPSは車内に隠し置くか、磁石などを使って車の下に取り付けます。ただ、車内に隠し置くには車の合鍵が必要なので、実際には車の下に取り付けるパターンが多くなります。車下で覗き込むような人は滅多にいないため、GPSを覗くとすぐに見つかってしまいます。とはいえ、発見されればレギュラーが発生し、我々は恐怖のどん底に陥れられる場面に遭遇することもあります。どんな場所へ行かれたのかというと、それはディーラーに行かれたときです。
意外なところで役立つ高級車
2025/09/05
調査がバレてしまった時、意外に役立つのが高級車です。車体の色は黒系が望ましいです。なぜ黒系の高級車が役立つのかというと、見た目が厳つくて威圧感もあるからです。要するに、こんな怖そうな車に乗っている間者は只者ではないだろう、と連想させることができる可能性もあるのです。調査がバレた場合、ターゲットが逆尾行を仕掛けてくることもないではありません。そうしたときに、黒塗りの高級車で尾行していれば、ターゲットも神経質になって無闇に声をかけてくることはありません。もちろん絶対ではありませんが、ターゲットを刺激しないよう逃げてくれます。特に駐車場に車を停めている場合、黒塗りの高級車が停まっているからといって、とても堅気じゃないだろうと警戒されるのです。それでも声をかけてくる人がいるなら、よほど強気な人物でしょう。
ラブホテルはツライ職場
2025/09/05
職業が探偵であることをまわりの人に言うと、「おもしろそう」「私もやってみたい」などと言ってもらえることが多く、アルバイトで使ってもらえない? と真剣に頼んでくる人もいます。具体的にどんな仕事を手伝いたいというリクエストで特に多いのは、「ラブホテルで張り込んでみたい」というものです。ラブホテルは絵に描いたような浮気現場の臨場感があってゾクゾクすると思われるのでしょう。しかし探偵にとってラブホテルでの張り込みは、ときに苦痛の場所になることもあります。どんな苦痛となるかについて、一つケースを例に挙げてみるのがわかりやすいでしょう。
犯罪の瞬間を目撃!
2025/09/05
長時間張り込みをしていると、いろんな光景を見ることになります。大声で歌を歌いながら歩く通行人を見ることもありますし、考えられないようなファッションをした女性を見ることもあり、雑談のネタにもなるのですが、ときには思いもかけない光景を目撃することもあります。私が目撃した忘れられない光景は、犯罪の瞬間でした。このとき私が担当していた調査は、なんてことのない浮気調査で、ターゲットはパチンコに夢中になっており、浮気相手と密会する様子は見られません。ですので、車の後部座席で寝そべりながら、パチンコ屋の駐車場に停まっているターゲットの車を監視していました。すると、どこからともなく現れた中年の男が、ターゲットの車の周辺をうろつきはじめました。どうやら、車内に潜んでいる存在に気付いていない様子です。「なんだ怪しいヤツだな、自分の車じゃないと棚に上げて、ちょっと見てやるか」そう思ったのも束の間、男はおもむろにターゲットの車のドアを開けはじめたのです。ドアが開くと同時に、わずか10秒ほどで男は車内から物を盗み出すと、すぐにその場から離れ、近くに停めてあった自転車に乗って逃げていきました。私は犯罪の瞬間をカメラに押さえることに成功しています。なんとも言えぬ緊張感と快感を同時に味わいました。探偵として調査で撮影した映像を個人的に保管することは、本来許されません。しかしこの時のものだけは、今でも記念として残しています。
探偵同士がはち合わせたとき
2025/09/05
滅多にあることではないのですが、探偵が同じターゲット調査をして、2人の依頼者が同じターゲットを調査させるというパターンでここに困ってしまうのは、探偵同士が同じ現場に出てみてはじめて、お互いに怪しい素振りを発見し、そのうちに探偵だと知ることになります。なぜ依頼者は探偵に黙って2つの探偵社を雇い、同じ日の同じ時間に、同じ現場に出動させるのでしょう? その理由は2つあります。1つは同じ現場に2人の探偵を出したほうが、ラバール心から用心効果が生まれ、失敗の可能性も減少するだろうと考えているからです。もう1つの理由は、探偵社をいかがわしくて信用しきれず、2つの探偵社をナナメにかけ合って確実を期そうという依頼者の気持ちがあるからです。
子供の意外な行動
2025/09/05
探偵の追跡ターゲットは、必ずしも大人だけとは限りません。「子供を尾行するなんて楽勝じゃないの?」そう思われる人も多いかと思いますが、断じてそんなことはありません。子供は気ままで、予想もしない行動を取ることがあるのです。ここでは「子供の尾行調査」の失敗談を紹介しましょう。この時のターゲットは、小学生の男の子でした。両親は離婚していて、離婚後は父親と生活しています。一方、依頼者は元母親方のおおばあちゃんです。元母親方のおおばあちゃんは、どうしても孫に会いたいというのです。せめて映像だけでも孫の姿が見たいという依頼でした。
いくつになってもラブホテルで
2025/09/05
若い人は意外に思うかもしれませんが、ラブホテルの利用率を年齢層別で表すと、中年層以上が圧倒的に多いです。さらには60代の老年のカップルが利用することも、珍しいことではありません。新米の頃には、老年のカップルがラブホテルに出入りする光景を見るたび、「どこにそんな性欲があるのか?二人で一体どんなプレーをしているのか?」と考えたものでした。嘘だと思うなら、ラブホテルを張り込んでみて下さい。間違いなく老年のカップルが発見されるはずです。調査中はどんなプレーであっても、淡々と職務を全うするようになるのです。