住宅ローンなどがある場合の婚姻費用
2025/09/05
前述したように、婚姻費用は、生活レベルや収入、資産に応じ通常の生活を維持するために必要な費用のことをいい、衣食住の費用、子どもの教育費、医療費や交通費などを含んでいます。現在、夫が家に住んでいる住居の住宅ローンの支払を、住居費を含め婚姻費用の支払と、住宅ローンの支払をするという点で、夫が婚姻費用を二重払いすることになり、夫に過剰な負担を強いてしまうことになります。しかし、一方で、住宅ローンの支払額が、算定表に基づいて計算される婚姻費用額と同額かそれ以上の場合、月々の住宅ローンの支払額を、全額婚姻費用から引いてしまうと、妻は婚姻費用を少ししか受け取れない、場合によっては一切受け取れないことになり、妻や子どもが生活できない状態になる可能性もあります。また、そもそも住宅ローンの支払は、住宅の所有者(婚姻費用支払義務者)の資産形成になるという意味あいもあり、住宅ローンの支払額全額を、婚姻費用から差し引くことは適切ではないと考えられます。そこで、住宅ローンについては、双方にとってできるだけ公平になるように調整する必要があるといえます。たとえば、夫の収入から住宅ローンの支払額を差し引いた額を婚姻費用の計算をする際の夫の収入と考える方法、その住宅ローンを支払っている家と同居している者の家賃を推測した金額を婚姻費用から引く方法、現に居住している家の家賃収入と同じような収入の人の平均的な家賃を婚姻費用から控除する額を調整します。住宅ローンのほかにも、婚姻費用を支払うべき夫が、妻や子どもの生活費にあたる、携帯電話代や水道光熱費を支払っているような場合についても、これらの生活費は婚姻費用の中に含まれることになるため、婚姻費用から夫が支払っているこれらの金額を控除して支払われることになります。一方、マンションの管理費や修繕積立については、生活費ではなく不動産に関する費用と考えられ、不動産の所有者が支払うべきものとして、婚姻費用からは控除されないことが一般的です。
婚姻費用の計算の基準となる収入とは
2025/09/05
生活水準や収入・財産、子どもがいるかどうかで額は決まってきます。支払う側の年収が多いほど、受け取る側の年収が少ないほど、つまり二人の収入差が大きいほど基本的に婚姻費用は高くなります。このため、専業主婦の場合は婚姻費用も比較的高額になる傾向があります。話合いでも、調停の場においても計算の目安として、「東京・大阪養育費等研究会」が2003年にまとめた「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案―」にある算定表を用いています。この算定方式が作成されて以降これを使うことが一般的に定着しています。ちなみに、婚姻費用を請求するには収入があったも問題ありません。二人の間に少しでも収入の差があれば請求できます。婚姻費用は子どもの状況に応じた養育費や教育費が含まれるので、子どもの人数が多いほど、子どもの年齢が高いほど婚姻費用も高額になる傾向があります。婚姻費用を確定するには、まず収入を明らかにしなけれなりません。夫が給与所得者である場合は、源泉徴収票を入手します。源泉徴収票には、「支払金額」と「給与所得控除後の金額」という二つの金額が記載されています。このうち婚姻費用の計算の基準となる収入は、控除される前の「支払金額」です。事業主である場合には、確定申告書に記された、課税される所得金額に、現実には支出されない所得控除について加算された後の金額が総収入と判断します。そこでこれらとの差額について加算された後の金額が総収入と判断します。そこでこれらとの差額について加算された後の金額が総収入と判断します。なお、夫が事業主の場合には、妻側の主張として、「夫は収入を少なく申告しているが、実際はもっと稼いでいるはずだ」ということがあります。申し立ての側で具体的な資料である確定申告書のほか、この場合であっても、多くの収入があるはずだということを、何らかの客観的資料をもとに、裏付けが証明されなければ、なかなか容易には認められません。妻が事業の経理を手伝っていたような場合でなければ、なかなか資料を集めることはむずかしく、確定申告書の収入を裁判所に認定してもらうのは困難であると考えられます。
婚姻費用とは
2025/09/05
夫婦が別居したときなどにたとえば専業主婦の場合、仕事をしている夫からお金が入らなくなってしまい、たちどころに生活に困ってしまうことがあります。そのときに活用できるのが「婚姻費用」です。結婚した夫婦が共同生活を維持するために必要な衣食住の費用、交際費、医療費、子どもの養育費などのことを婚姻費用といいます。夫婦には、通常の生活を送るために必要な費用の負担を分担する義務(生活保持義務)があります。これには衣食住費のほか、教育費、娯楽教養費、医療費、交際費なども含まれます。この義務を根拠にして相手方に婚姻費用を請求することができるのです。婚姻費用が問題となるのは主に別居状態になったときですが、夫婦が別居中でも法律的には婚姻状態が続いているとの考えのもと、別居中であってもそれぞれの生活費や子どもにかかる費用は婚姻費用として分担すべきことになっているからです。婚姻費用は当事者同士の話合いで決めることができます。
分割の手続
2025/09/05
請求には日本年金機構の事務所に「標準報酬改定請求書」を提出します。自動的に権利が認められる3号分割においても手続が必要です。
受取額ではなく、納付実績を分割する
2025/09/05
年金分割制度は、あくまでも結婚をしていた間の保険料納付実績を分割する制度であるため「婚姻前の期間」の分は反映されません。
年金分割制度のこと「熟年離婚」の公平を期すために導入
2025/09/05
会社員や公務員である夫とその妻が離婚する場合、年金を受け取る権利を夫婦で分割できる制度を「年金分割制度」といいます。これを理解するためには、まず年金制度のことを知っておかなければなりません。日本の年金制度は「3階建て」と呼ばれており、「1階部分」は国民全員が加入する国民年金制度です。「2階部分」は、会社員や公務員の「厚生年金」で報酬に比例して増えるものです。また、「2階部分」には、自営業者などが加入する国民年金基金も当てはまります。「3階部分」は、厚生年金基金や確定拠出年金(企業型)、など、いわゆる企業年金や公務員の年払い退職給付などが当てはまります。年金分割制度は、特に熟年夫婦が離婚した場合の夫婦間の公平を実現するために、2007年4月1日以降に離婚したケースから利用できるようになりました。たとえば、一方が会社員として働いて収入を得て、他方が家事を行っていた場合、夫婦のいずれか片方のみが厚生年金を全額受給できることは不公平だとの判断からです。年金分割の対象となるのは、「2階部分」の「厚生年金」にかぎられています。たとえば、配偶者の仕事が婚姻中ずっと自営業で厚生年金に加入していないという場合には、年金分割の対象となる年金はありません。公務員の場合、2015年9月30日までは「2階部分」の共済年金と「3階部分」の共済年金職域加算について年金分割の対象となっていました。2015年10月1日からは、いわゆる年金一元化により、共済年金制度は厚生年金制度に統一されたため、離婚時の年金分割は当事者が婚姻期間中に加入したすべての厚生年金の標準報酬等を合算して行うことになりました。すなわち、2015年10月1日以降、年金分割の請求をする場合に年金分割の対象となるのは、会社員と公務員の「厚生年金」の部分のみです(138ページ上図参照)。
浮気の場合、不倫相手にも請求できる
2025/09/05
夫(妻)が浮気をした場合、妻(夫)は、不貞行為をした夫(妻)とその不倫相手に対しても、精神的苦痛の慰謝料として、損害賠償を請求することができます。ただし、夫婦関係がすでに破綻している状態で、別居後に配偶者が異性と性的関係をもった場合は慰謝料の請求はできません。同居中でもすでに家庭内別居の状態の場合も同様で、破綻後の関係とされ、認められない場合もあります。また、不貞行為をした配偶者が、結婚していることを隠していた場合や性的関係を強要した場合などでは、不倫相手に対しての慰謝料の請求はむずかしくなります。
慰謝料のこと
2025/09/05
原因となった行為、因果関係、損害を明らかに「慰謝料」を辞書で調べると「済まないと思ってなぐさめること」という意味のことが書かれています。相手方の責任によって離婚した場合、これによって精神的に苦痛を受けたことに対して損害の賠償を求め、支払を受けるものが「慰謝料」です。婚姻費用や養育費とは異なり、慰謝料には算定表のようなものはないため、さまざまな要素を総合的に判断して決めていきます。具体的には、婚姻期間、離婚の原因、収入、未成年の子の有無などが考慮に入れられます。夫婦間の話合い、もしくは調停でもまとまらない場合は、訴訟を起こすことになります。訴訟になった場合の慰謝料もさまざまな要素を判断して決めますが、相場は100万円〜300万円ほどです。裁判所の判断にあたっては、まず「破綻原因」を特定します。不貞行為(浮気)や暴力、性交渉がないこと、生活費の不払など、破綻が何によって引き起こされたかをまず調べます。たとえば、不貞行為の場合、配偶者以外との肉体関係がいつからいつまで、どのように続けられたのかを特定する必要があります。ただし、こうした関係は外にはなかなかわかりにくいのが実態であり、写真や音声データ、ホテルの領収書やクレジットカードの明細書などの証拠が役に立ちます。暴力行為については、暴力が一時的なもので、そのときに病院に行っていれば特定が容易です。ただ、暴力が継続的に行われている場合、その恐怖から病院に通っていないケースもあります。その場合、なぜ行くことができなかったか、暴力行為があったかどうかを調べることになります。次に、「因果関係」を特定します。不貞行為や暴力行為があってから円満だった夫婦関係がいかに破綻していったかその経緯を立証します。突然離婚を切り出されるケースもあれば、性生活が拒否されるようになった、外泊が増え家に帰らなくなったといった例がこれにあたります。結婚が破綻した経緯についてもどの時点で破綻したかを判断することはむずかしいため、身体的な苦痛については本人が書いた日記などにより立証することもあります。これによって破綻原因をつくった行為がいかに夫婦関係を破綻させたのかその経緯を明らかにします。さらに、その行為によって受けた苦痛がどのようなものか、「損害」を明らかにしていきます。ここでは、どれほどの精神的・身体的苦痛を受けたのかを示します。不貞行為の場合、自殺未遂、うつが発症したことなどもそれにあたりますし、暴力行為の場合は体にについた傷がそれを物語ります。そのような場合、診断書をとることによって立証することもできます。どれだけひどいことをされていても、裁判では証拠がなければその事実があったと認定することができません。つまり、慰謝料がとれなくなる可能性が高くなるわけです。ですから証拠集めはとても大切なのです。以上のことに加え、結婚していた期間の長さ、結婚生活の内容、当事者の年齢や収入、資産、子どもの数、財産分与や養育費の支払など離婚後の生活などを総合的に考えて慰謝料は決められます。その他、「性格の不一致」を理由に慰謝料が発生する事例では、それが原因で婚姻関係が破綻したという重大な事由が認められた場合のみ、慰謝料が認められることもありますが、仮に認められたとしても、不貞行為や暴力行為の場合よりも、慰謝料の金額はかなり低額になります。なぜなら、性格の不一致は夫婦のどちらかの責任ということとを証拠により証明することがむずかしいからです。
債務(借金)
2025/09/05
自分のために個人的に借りた債務は、清算の対象にはなりません。ただし、婚姻生活のために生じた債務は、夫婦共有の債務として財産分与の対象となります。
第三者名義、法人名義
2025/09/05
第三者名義や法人名義は、夫婦とは他人ですから原則として財産分与の対象とはなりません。もっとも、夫婦共同で家業に従事している家族共同経営が数多くあります。このような場合は、通常は家族経営の代表者である夫の財産となっている場合がよくあります。家族経営のケースについては夫婦の寄与分を認定して、これを財産分与の対象とすることもあります。また、実態は個人経営なのに、税務対策上法人にしているケースもありますが、この場合、名義のいかんにかかわらず、財産分与の対象にすることもあります。法人といっても、さまざまなタイプのものがあり、たとえばこれまで個人事業主であったのに、あるときから株式会社にするというケースや、当初は個人の開業医であったのが医療法人になるというケースもあります。このような場合、個人事業主であったときには、事業所得というかたちで所得が発生していましたが、法人化することによって役員報酬というかたちで所得を得ることになります。もし、この役員報酬の金額を大幅に下げられるようなことがあれば、婚姻費用や養育費にも影響が及んでくる可能性があります。構成員に利益の分配を予定している株式会社などとそのような分配を予定していない医療法人などでどのように収入を評価するかは変わってくるのです。このようなケースは、きわめて専門性が高くなるため、弁護士に相談することを強くおすすめします。
退職金
2025/09/05
退職金については、賃金の後払いという考え方から、夫婦が結婚している間に協力して築いた財産と見なされ、財産分与の対象となります。夫が在職中の場合、将来支払われる退職金についても、対象として認められる傾向が強くなっています。退職金がすでに支払われているのか、将来支払われる場合であるか、勤続年数や婚姻年数などで財産分与の対象になる額や割合などが変わります。なお、退職金が共有財産の部分となるのは、婚姻してから婚姻関係が破綻する時期までの部分にあたる額となります。
保険・保証料
2025/09/05
・生命保険離婚前に満期を迎えている生命保険金は、受取人がどちらでも夫婦の共有財産として対象になります。満期を迎えていない生命保険の場合は、財産分与の基準とする時点においての解約返戻金相当額を共有財産としての財産分与額算定の基礎とすることが一般的です。解約返戻金の額は、契約者が保険会社に確認できます。ただし、解約返戻金のないいわゆる掛け捨てタイプの生命保険には適用されず、財産分与の対象とはなりません。・火災保険火災保険については、不動産を住宅ローンで購入したような場合に特に注意が必要です。たとえば、不動産を購入する際に、35年ぐらいのローンで購入することはよくあります。その不動産を購入する際に、併せて火災保険をローン期間に相当する期間(この場合、35年間)の保険料を最初に一括して支払うという場合があります。そうすると、たとえば、購入して10年で離婚をすることになり、どちらか一方が不動産を取得する、あるいは、売却をして売却代金を折半することになった場合に、この火災保険についてもどのような取扱にするのかを併せて取決めをしておく必要があります。未到来の期間25年分の火災保険料を、不動産を取得した側が引き継ぐということになれば、その時点での解約返戻金の半額に相当する金額を他方に分与するなどの方法が考えられます。また、不動産を売却することになった場合には、火災保険の解約返戻金が入ってきますので、その入ってきた火災保険の解約返戻金を半分ずつ取得するといった取決めをすることが考えられます。・住宅ローンの保証料この火災保険と併せて、不動産を売却するような場面で忘れてはならないのが住宅ローンの保証会社に支払った保証料の返戻金です。住宅ローンを組むときにはよく住宅ローンを貸し出す金融機関の系列の保証会社に保証料を支払うことがあります。この保証料は不動産を購入するときに保証期間に応じた保証料を支払っていることが多いです。そのため、途中で不動産を売却して、住宅ローンを完済したときには、保証会社の保証業務が終了するため、残りの保証期間に応じた保証料が戻ってくる場合があります。そのため、不動産を売却する場合には、保証料が戻ってきたときのことも想定をして、これを誰がいくら取得するのかをあらかじめ取り決めておいたほうがよいでしょう。・学資保険学資保険についても、夫婦が積み立ててきたものですので、基本的には財産分与の対象となります。学資保険に関しては、たとえば、父親の名義で契約をしていたが、母親が子どもの親権者になったことから、学資保険の名義を母親に変えてその後は母親が掛金を支払っていくという取決めがよくあります。学資保険の契約時期にもよりますが、離婚が成立した段階ですぐに解約するよりも、契約を継続していったほうが経済的なメリットがあるため、そのような取決めがなされることが多くあります。